はじめに
「薬学部でPythonって必要?」
そう思うのは自然だ。薬学は暗記も多いし、実験もある。プログラミングは別世界に見える。
でも現実は逆に動いている。研究室でも製薬企業でも、**“データを扱える人”**は足りていない。
そして薬学部の学生が一番ハマりやすいのが、まさにそこだ。
Pythonを学ぶ価値は、別に「エンジニアになれる」からじゃない。
研究がラクになる。成果が早く出る。就活で話せる武器が増える。社会人になってから伸びる。
この4つが揃うからだ。
この記事では、薬学部生がPythonを学ぶメリットを「研究」「キャリア」「効率化」の観点で、できるだけ現場目線で整理する。
研究で効く:結局、薬学研究は“データ処理ゲー”にな

研究室に入ると、実験そのものよりも時間を取られる作業が出てくる。
- 複数条件の測定値をまとめる(吸光度、蛍光、細胞生存率など)
- HPLCの結果を整理して、日々の傾向を見る
- NMRのピーク表を整理して、比較する
- グラフを作って、スライドに貼る
- 条件を変えた結果を比較して、「何が効いたか」を説明する
ここで詰むのが、Excelの“手作業ループ”だ。
コピペ、並べ替え、フィルタ、平均、SD、グラフ…を何度も繰り返す。
一度ならいい。でも研究は同じ処理を何十回もやる。
Pythonの強みはここ。
- 同じ処理をワンクリックで再現できる
- 手作業ミス(転記、範囲ミス、条件ミス)が減る
- “再現性”が出る(後からやり直しが効く)
つまり、研究が速くなるだけじゃなく、研究の質が上がる。
「何がラクになる?」「やり方は?」「効果は?」──研究室で一番効く3パターン
ここは抽象論より、具体の勝ち筋を置く。
① CSVが大量にある問題
ラクになること: 何十ファイルも開いてコピペする地獄が消える
やり方: フォルダ内CSVを一括で読み、同じ処理を自動で回す
効果: 集計・グラフ作成が“作業”から“確認”に変わる
② グラフ作成が毎回だるい問題
ラクになること: Excelグラフの微調整・作り直しが消える
やり方: Pythonで箱ひげ・散布図・棒グラフをテンプレ化
効果: 図の品質が安定し、スライド作成が速くなる
③ 同じ解析を何回もやる問題
ラクになること: 条件違いの比較を毎回やり直さなくていい
やり方: 関数化して「データ入れる→結果出る」にする
効果: 試行回数が増え、結論が早く出る(これが一番デカい)
コードは“見せる”より“使える”が正義(例:CSV一括→平均・SD→図)
いまの原稿のコードは悪くないけど、「薬学データでよくある形」に寄せた方が刺さる。
例えば、複数条件の測定結果(Value列)があるCSVが山ほどある想定。
やってることはこれだけ:
- フォルダ内のCSVを全部読む
- 条件ごとに平均・SDを出す
- 箱ひげ図で比較する
(※記事ではコードを長くしすぎない方が読者が逃げないので、載せるならこのくらいが丁度いい)
バイオインフォ/AIは“将来の話”じゃなく、もう現場で始まってる
薬学部の「Python」の価値は、実は二段階ある。
- 第1段階:研究室の雑務がラクになる(全員に効く)
- 第2段階:計算・AI・データ解析のテーマに踏み込める(刺さる人に強烈に効く)
後者は、バイオインフォ、計算化学、創薬スクリーニング、化合物データ解析…みたいな世界。
ここに行く気がなくても、第1段階だけでも十分元が取れる。
就活で効く:薬学部の“差別化”はエピソードの具体性で決まる

「薬学+Python」は確かに珍しい。
でも、それを価値に変えるには言い方が重要だ。
強いのはこれ。
- ラクになったこと(何が大変だったか)
- やったこと(どう自動化したか)
- 効果(どれだけ減ったか/ミスが減ったか)
- 再現性(他の人でも回せるようにしたか)
たとえばESで使える形にすると、こうなる。
実験データ集計(複数CSVの統合・外れ値チェック・グラフ作成)をPythonでテンプレ化し、毎週の集計作業を短縮した。結果として、解析の試行回数を増やせるようになり、考察と実験設計に時間を回せるようになった。
この形なら、研究職でも、開発職でも、QC/QAでも、DX寄りでも刺さる。
社会人になって効く:地味だけど“強い人”の条件になる
薬学系の仕事は、学生の想像よりも“事務+調整+記録”が多い。
そこでPythonが効くのは、派手なAIじゃない。こういうやつ。
- ファイル名・フォルダの一括整理
- 定型報告書の自動生成(テンプレ化)
- データの形式統一(CSV→整形→集計)
- ログの異常検知(ルールベースでも十分強い)
ラクになること: 「毎回同じことをしている時間」が消える
やり方: テンプレ化・自動化・チェックの仕組み化
効果: ミスが減る、残業が減る、信用が増える
結局これが、現場で一番強い。
独学ロードマップ(薬学部向けに最短)
「学ぶ内容が多すぎて詰む」人が多いので、最短ルートだけ置く。
- Google ColabでPythonに触る(環境構築で詰まない)
- pandasでCSVを読む(研究室で即使う)
- matplotlibで図を出す(スライドに貼れる)
- “自分のデータ”でテンプレ化(ここが本番)
ポイントは、最初からAtCoderとか競プロに行かないこと。
薬学部生が欲しいのは「成績」じゃなくて「研究が進む道具」だ。
将来キャリアの広がり
Pythonを学ぶことで、将来のキャリアは研究職に限らず大きく広がる。
- 研究職志望の場合:効率化スキルで周囲との差をつけられる。
- 製薬企業のDX関連職志望の場合:薬学知識+ITスキルという稀少な人材になれる。
- 大学院・アカデミア進学の場合:データ解析やAI研究に取り組める。
薬学知識とPythonスキルを掛け合わせることで、幅広い分野で活躍できる土台が築かれる。
薬剤師免許だけでは差別化できない時代

年間何万人もの学生が薬剤師国家試験に合格し、資格を取得している。もちろん薬剤師免許は強力な武器だが、それだけでは差別化が難しいのも現実だ。
一方で、Pythonを使って研究や業務改善を実践できる薬学部出身者は極めて少ない。筆者は、自身の転職活動で「薬学+プログラミング」という組み合わせが、薬剤師資格以上に強力なアピールポイントになったと実感している。
筆者の体験談
私自身は転職活動の際、エクセルVBAとPythonを用いて何百時間単位で業務改善を実現した経験をアピールした。すると「ぜひうちに来てほしい」というスカウトメールが次々と届いた。多くの社会人の中でも、プログラミングを駆使して改善ができる人材は非常に貴重であることを実感した。この経験からも、薬学部生がPythonを学んでおくことは、将来のキャリア形成において大きな武器になると確信している。
まとめ:薬学部でPythonを学ぶ意味は、普通にデカい
- 研究がラクになる(CSV処理・集計・図作成がテンプレ化できる)
- 研究の質が上がる(再現性と試行回数が増える)
- 就活で差別化できる(「ラクにした」「効果」を語れる)
- 社会人になって伸びる(改善できる人材は強い)
- 独学はColab→pandas→図→自分のデータが最短
薬学とPythonは遠そうに見えて、実は相性がいい。
「薬学を捨ててITに行く」じゃない。
薬学を武器にするためにPythonを足す。それだけで、研究もキャリアも動きやすくなる。


