はじめに:マクロは便利だ。でも「評価」にならない壁がある
Excelマクロ(VBA)は、業務改善の入口として強い。
私もVBAで、教育記録や文書作成の自動化を組み、日々のルーチンを短縮してきた。
ただ、どれだけ便利な仕組みを作っても、返ってくる反応はだいたい同じだった。
- 「便利だけど、所詮マクロだよね」
- 「属人化が怖い」
- 「その人が異動したら終わり」
つまり、成果は出ているのに“DXとして評価されにくい”。
この壁は、VBAを真面目にやった人ほどぶつかる。
そこで私は、思い切ってPythonへ移行した。
すると不思議なことに、同じような自動化でも“扱い”が変わった。
- 「DXの取り組み」として上層部に伝わりやすい
- 展開(部署→工場→グループ)を議論しやすい
- 「ツール」ではなく「アプリ」「仕組み」に見える
もちろん、Python移行は魔法ではない。疑問も壁も出る。
この記事では、私が実際に悩んだ 「疑問5選」 を、現場目線でまとめる。
先に結論:移行して良かったか?
結論、評価を変えたいなら移行の価値は大きい。
ただし「Pythonにしただけ」で勝てるわけではない。勝ち筋はこうだ。
- “便利ツール”ではなく、仕組み(運用)として設計する
- 効果を数字で語れる形にする
- 配布・保守・権限・セキュリティまで含めて“DX”にする
ここまでやって初めて、周囲の見え方が変わる。
疑問① 環境構築ってどうすればいい?

結論:VS Code+Python本体で十分。最初の壁は思ったより低い
最初に詰まりやすいのが「環境構築」だ。
検索するとAnaconda推しの記事が大量に出てきて混乱するが、業務改善の多くはこれで足りる。
- Python本体
- VS Code
- 必要なライブラリを
pipで入れる
私がよく使ったのはこのあたり。
openpyxl:Excelの読み書きpandas:表データ処理(集計・整形)pyinstaller:exe化して配布
環境構築は「数日溶けるもの」だと思っていたが、ちゃんと絞れば拍子抜けするほど早い。
大事なのは、最初から盛りすぎないことだ。まず“Excelを読んで書く”だけでいい。
疑問② UI(操作画面)はどうするの?
結論:まずTkinterで慣れる → “アプリらしさ”が必要ならPySide6
VBAはExcelがそのままUIだった。
Pythonに行くと「どこにボタン置く?入力欄どうする?」で止まる。
ここでおすすめの順番はこれ。
- Tkinterで最短で形にする
- 続ける価値が見えたら PySide6で作り込む
まずはTkinter(最速で動く)
Tkinterは標準搭載なので追加インストールが不要。
「とにかく社内で動くものを見せたい」段階では強い。
import tkinter as tk
from tkinter import messagebox
def say_hello():
messagebox.showinfo("メッセージ", "こんにちは!Tkinterです")
root = tk.Tk()
root.title("Tkinter サンプル")
btn = tk.Button(root, text="クリック", command=say_hello)
btn.pack(pady=30)
root.mainloop()
Code language: JavaScript (javascript)
欠点は見た目が古くなりやすいこと。
“ツール感”が出るので、社内の温度感によっては損をする。

本格派はPySide6(UIで勝てる)
PySide6は見た目を作り込みやすい。
CSSっぽく整えられるので、「アプリとして配布したい」なら強い。
from PySide6.QtWidgets import QApplication, QWidget, QPushButton, QMessageBox, QVBoxLayout
import sys
def say_hello():
QMessageBox.information(None, "メッセージ", "こんにちは!PySideです")
app = QApplication(sys.argv)
window = QWidget()
window.setWindowTitle("PySide サンプル")
btn = QPushButton("クリック")
btn.clicked.connect(say_hello)
layout = QVBoxLayout(window)
layout.addWidget(btn)
window.show()
sys.exit(app.exec())
Code language: JavaScript (javascript)
注意点もある。
TkinterとPySide6は互換性がないので、移行時は基本的に書き直しになる。
だから私は、最初から完璧UIを狙わず、まず“動くもの”で勝つ方がいいと思っている。

疑問③ 社内でどう配布するの?相手がPython未導入かも?
結論:exe化で解決。ただし「配布後の運用」まで考えるのがDX
VBAはExcelファイルを配れば終わる。
Pythonは「相手のPCにPythonがないと動かないのでは?」が不安になる。
ここは PyInstallerでexe化 が現実解だ。
pyinstaller --onefile mytool.py
Code language: CSS (css)
これで mytool.exe が作れる。
共有フォルダに置いて配布すれば、基本はダブルクリックで動く。
ただし、ここが“マクロと違う本質”だと思っている。
- exe化は配布を楽にする
- でも「更新」「バージョン管理」「不具合対応」は別問題
Python移行で評価を取りに行くなら、配布の次にこれを整えるべきだ。
- バージョン番号を付ける(v1.0 / v1.1)
- 更新履歴(変更点)を残す
- 共有フォルダの「正式版」置き場を決める
- “誰が使ってるか”を把握する(最低限)
ここまでやると、便利ツールではなく運用される仕組みになる。
そしてこれが、DXとして評価されやすい。
疑問④ 本当に移行する価値ある?
結論:「中身が同じでも、見え方が変わる」。だから価値はある
正直、最初は私も「マクロで十分」だと思っていた。
周囲もそう言っていた。
ただ、PythonでGUI化して“アプリ”の形にした瞬間、空気が変わった。
- 「これはDXだね」と言われる
- 部署内だけでなく、展開が検討される
- 「Pythonできる=IT寄り人材」として扱われる
同じ自動化でも、
- マクロ:便利な個人技
- Python:仕組み(アプリ/システム)
に見えやすい。ここは現実として大きい。
もちろん、VBAが劣っていると言いたいわけではない。
ただ、会社の多くは「言葉」と「見た目」で判断する。
だから私は、評価を変えたいなら“見え方”を変えるのが早いと思っている。
疑問⑤ 学習コストはどれくらい?

結論:VBA経験者なら実用レベルまで早い。AIがいる今はさらに早い
「Pythonは難しい」
これは半分正しい。でも半分は古い。
VBA経験があるなら、概念的には近い。
- 変数、条件分岐、繰り返し
- ファイルの読み書き
- 例外処理(エラー対応)
さらに今は、AIに相談しながら進められる。
私はこれが決定的に大きいと思っている。
目安としては、Excel処理が中心なら
- 1〜2か月で「業務で使える」ラインに到達
- 3か月で「配布できるツール」になってくる
もちろん個人差はあるが、少なくとも「一生無理」みたいな難易度ではない。
よくある落とし穴:Python移行で詰むポイント
移行の成功率を上げるために、私がハマった落とし穴も置いておく。
- 最初から完璧なアプリを作ろうとして止まる
→ まずは“Excel読み書き+1ボタン”で勝つ - 作った人しか触れないまま運用が死ぬ
→ 手順書・更新方法・置き場所を残す(資産化) - 効果が曖昧で「便利だね」で終わる
→ 工数削減を数値化する(時間×単価) - 配布後の修正が泥沼になる
→ バージョン管理・更新履歴・正式版置き場を作る
Pythonで評価が上がった理由は、言語そのものより
“運用される仕組み”として見えたからだと思っている。
まとめ:疑問5選の答え
- 環境構築 → VS Code+Python本体で十分
- UI → Tkinterで最速、作り込むならPySide6
- 配布 → exe化で解決。ただし運用まで設計すると強い
- 価値 → “見え方”が変わり、DXとして通りやすくなる
- 学習コスト → VBA経験者なら意外と短期間で実用に届く
最後に一つだけ。
私が移行して一番強く思ったのはこれだ。
「思ったより簡単で、思った以上に評価される」
もし今、VBAに限界を感じているなら、Pythonに一歩踏み出す価値はある。
そして踏み出すなら、言語移行だけではなく、運用・資産化・数字化までやる。
そこまでやると、ただの便利屋では終わらない。
あとがき:VBA×Pythonは“橋渡し”として強い
私はVBAとPythonの両方を触れるようになって、
「移行できる人」は思ったより少ないと実感した。
- 現場を知っていて
- Excel文化もわかっていて
- そこからPythonで“仕組み化”できる
この橋渡しは、社内でも転職市場でも武器になる。
社内評価が追いつかなくても、外の評価軸を持つと強い。
だから私は、腐らず業務改善を続ける。




