【発症】突然の高熱と激痛、「ただ事じゃない」と感じた瞬間
ある日、急に40度を超える高熱と、全身を締めつけられるような激しい関節痛に襲われた。インフルエンザかと思い病院へ駆け込むと、即座に血液検査。結果は「白血球が限りなくゼロに近い」と言われ、そのまま緊急入院が決まった。診断名は「無顆粒球症」。そのとき真っ先に頭をよぎったのは、「仕事、どうしよう……」という不安だった。お金のこと、治療費のこと、先が見えない中で、とりあえず父親に電話した。返ってきた言葉は「まったく問題ない」。すごく安心したのを覚えている。
【入院生活】個室、激痛、絶望感。そしておばちゃん看護師のひと言。

入院したのは「無菌室」――と聞いていたけど、実際には普通の個室のようだった。親族以外の面会は禁止。友人や同僚とも会えず、隔離されたような孤独感。体はずっとしんどく、特につらかったのが「喉の激痛」。コロナの喉の痛みなんか比にならない。何も食べられず、味も感じないほど薄い病院食を口に運ぶだけで吐き気がした。痛みで眠れず、ただただ時間が過ぎていく。
トイレは部屋の中についていて、点滴を引きずりながら自分で行く。シャワーは週2回。点滴のルート部分をビニールで覆って入るのだが、それすらも面倒に感じるほど体力は落ちていた。
そんな中、担当の看護師さん――年配のおばちゃんが、点滴を交換しながら「つらいけど、頑張ってね」と声をかけてくれた。その一言がやけに心に沁みた。誰とも会えない中で、やさしい言葉がどれほど支えになるかを実感した。
【治療法の選択】手術か、アイソトープか
数週間後、主治医から「バセドウ病の治療を本格的に始めましょう」と告げられた。選択肢は2つ。
「甲状腺を切除する手術」か「アイソトープ治療(放射線治療)」。
入院していた病院では手術一択とのことで、すぐに手術の予約を取るよう提案された。でも、正直、首元を切る手術には強い抵抗があった。
調べると、自宅から通える範囲にアイソトープ治療が可能な病院があり、迷わずそちらを選んだ。紹介状をもらい、転院手続きを開始。
ただ、ここからが大変だった。眼科でのMRI検査など、アイソトープ治療に必要な検査が多く、入院明けで体力が戻っていない中、何度も病院を行き来する日々。有給はすでに使い切っており、治療のために欠勤を重ねるしかなかった。
【アイソトープ治療当日】まさかのVIP対応、そしてあっさり終了

治療当日、指定された時間に病院へ行くと、血液検査は「VIP待遇」。待ち時間ゼロで案内される。治療後はすぐに帰される。これは、おそらく放射性物質を投与された人間を、院内でうろうろさせたくないからだろう。
治療自体は驚くほどシンプルだった。小さなカプセルをコップの水で飲むだけ。「はい、終わりです。お疲れ様でした。では早めにお帰りください」と淡々とした対応。拍子抜けするほどだったけど、これで人生が変わるかもしれない治療が始まったことに、なんとも言えない気持ちになった。
【治療後】再発なし、だけど不安は消えない
その後、転職を経て今に至るが、幸いにも無顆粒球症の再発はない。定期的に通院して甲状腺の数値を見ながら、ホルモン治療を続けている。ただ、あのときの激痛や孤独は、今でもふとした瞬間に思い出す。病気は「治って終わり」じゃなくて、「治療しながら生きていく」ものなんだと思うようになった。
【同じ病気で悩む人へ】
もし、今この文章を読んでいるあなたがバセドウ病や無顆粒球症の診断を受けて、途方に暮れているなら――大丈夫、ちゃんと回復できる。確かにしんどいけど、乗り越えた先には日常がある。僕は今、家族と穏やかに暮らせているし、普通に仕事もしている。
そして、あのとき病室で「つらいけど、頑張ってね」と言ってくれた看護師さんの言葉を、今度は僕からあなたに届けたい。
つらいけど、がんばって。大丈夫、あなたはちゃんと元の生活に戻ってこられる。
よくある質問(Q&A)【体験者のリアル版】
Q1. アイソトープ治療って怖いの?
A. 治療自体は全く怖くない。
「放射性物質を飲む」と聞いてビビっていたけど、実際はカプセル1個を飲むだけで終了。所要時間は数分。
むしろ治療前の検査や通院のほうがめんどくさくて大変だった。
Q2. 入院中はつらい?
A. 最初の1週間は地獄…。
のどの激痛、発熱、食欲ゼロ、眠れない夜。でも1週間過ぎれば症状は落ち着いて、あとはひたすら暇。ゲームをしたり、ドラマを見たりしていた。
トイレ付き個室、点滴つけたままの生活、週2回のシャワーなどもすぐ慣れた。
Q3. 職場への報告はどうした?
A. 無顆粒球症という副作用の可能性を事前に伝えていたので、スムーズに対応してもらえた。
産業医が状況をしっかり理解してくれて、上司にも丁寧に説明してくれたのが本当に助かった。
復帰後もデスクワーク中心で、「残業禁止」のお達し付き。職場のサポートがありがたかった。
Q4. アイソトープ治療後の体調は?
A. 一時的に甲状腺ホルモンの値が跳ね上がるから、数日はかなりしんどい。
動悸・息切れ・体温上昇・筋肉の痙攣などが出ることも。
でもこれは一時的なもので、少しずつ落ち着く。
Q5. 治療にかかったお金は?
- アイソトープ治療費:2〜3万円程度(保険適用)
- 入院費:約18万円(高額療養費制度を使えば実質負担はもっと下がる)
- 傷病手当や医療保険が支給されるまで2か月くらいかかったので、その間の生活費はちょっと苦しかった。
Q6. 手術と迷ったけど、どう決めた?
A. 手術は正直怖かった(笑)
病院側は「手術一択」と言ってたけど、アイソトープ治療ができる病院(例:伊藤病院)が通える範囲にあったので、そっちを選んだ。
保険の適用や費用面では手術の方が有利なこともあるけど、やっぱり「怖いかどうか」も重要な判断基準だった。
Q7. アイソトープ治療から1年半後、体調はどう?
A. 今はほぼ普通の生活に戻ってる。
毎朝チラーヂン(甲状腺ホルモン薬)を飲むだけで、あとは特に支障なし。
運動もできるし、サウナも行ける。
初めは薬の量が安定するまで通院が必要だったけど、今は3か月に一度の通院くらい。
「一生薬を飲み続ける」と聞くと不安になるけど、実際は風邪薬よりも生活に影響がない感覚。



