研究職と製造技術職(生産技術職)の違い|製薬会社のキャリアを「創る」と「届ける」で整理する

仕事

はじめに

製薬会社に就職・転職を考えたとき、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「研究職」だろう。
新薬を生み出す最前線。確かに花形だ。

ただし現実には、研究だけで薬は患者に届かない。
薬を安全に、同じ品質で、安定して作り続ける仕組みがなければ、社会に供給できない。

その中心にいるのが製造技術職(生産技術職)だ。

この記事では、研究職と製造技術職の違いを、以下の観点で比較しながら整理する。

  • 仕事内容(何をしている職種なのか)
  • 求められるスキル(向いている人の特徴)
  • やりがい(何に価値を感じる仕事か)
  • キャリアパス(転職市場での強み)
  • 「製造技術」と「生産技術」の違い(求人票の見分け方)

就活生にも、転職者にも、判断材料として使える内容にした。


筆者について

筆者はこれまで製薬会社3社を経験し、
製造部・研究開発部・製造技術部のすべてを通ってきた。

  • 製造部:現場オペレーションとGMPに触れ、「安全に作る」ことの厳しさを体感した
  • 研究開発部:合成研究などに携わり、「0から1を生み出す」探索の世界を経験した
  • 製造技術部:研究と工場をつなぎ、スケールアップや改善を通して「安定供給」の責任を担った

3つの部門を経験したからこそ、机上の比較ではなく、肌感の違いも含めて語れる。
この記事はその実体験に基づいている。

まず結論:研究職と製造技術職は「目的」が違う

両方とも実験をする。
白衣でラボに立つこともある。学生視点では似て見えるかもしれない。

だが、仕事の本質はここで分かれる。

  • 研究職:0を1にする仕事
    新しい薬の“種”を生み出す。未知を切り拓く仕事だ。
  • 製造技術職:1を10にする仕事
    研究で形になったものを、工場で“毎回同じ品質で作れる状態”にする。

どちらが上でも下でもない。
そもそも目的が違う。役割が違う。


共通点:どちらも「実験」はできる(ただし意味が違う)

研究職の実験:新しい知見を生み出す

  • 新規化合物の合成、薬効評価など探索的テーマが中心
  • 成功すれば論文・特許・学会発表につながりやすい
  • 正解が存在しない世界で、仮説を立てて検証する

研究職の実験は、端的に言えば「未知に挑戦するための実験」だ。

製造技術職の実験:再現性と安定性を確認する

  • 工場で再現できるかを確かめるスケールアップ、条件検討
  • バリデーション、トラブル再現試験など“安定供給”が目的
  • 「これなら同じ品質で作り続けられる」を証明する

製造技術の実験は、「工場で成立するか」を確かめる実験だ。
探索ではなく、再現性と確実性が価値になる。


呼ばれ方・評価の違いが、想像以上に大きい

ここは就活・転職で見落とされがちだ。

  • 研究職は「研究員」として研究所に所属することが多い
  • 製造技術は「技術者」「エンジニア」として工場・製造本部側に所属することが多い

実験をしていても、「研究員」という肩書きが付かないケースは普通にある。
この違いは、本人のプライドというより、社内の評価軸やキャリアの方向性に影響する。

研究職とは:新しい薬を生み出す最前線

研究職は「新薬を創る」ための職種だ。
企業によって範囲は異なるが、一般的には以下を含む。

主な仕事内容

  • 新規化合物の合成・探索
  • 薬効や安全性の評価(細胞・動物・各種アッセイ)
  • 製剤化検討(錠剤、注射剤など)
  • データ解析、論文・特許、学会発表

求められるスキル

  • 有機化学・薬理・分子生物などの専門知識
  • 実験設計(仮説→検証→考察)
  • 英語論文の読解力(最低限の基礎体力)
  • 長期テーマに耐える粘り

やりがい

  • 世界初の薬を生み出す可能性がある
  • 論文・特許など、成果が“形”として残る
  • 「0から1」を作る創造性がある

研究職の現実(ここを知らないと後悔する)

研究は成功が保証されない。
失敗や撤退も前提で、成果が出るまで数年単位でかかることも普通だ。

「成功する確率が低い世界で、試行錯誤に価値を見いだせるか」
ここが向き不向きを分ける。

製造技術職とは:薬を安定して社会に届ける要

製造技術職(生産技術職)は、薬を社会に届けるための職種だ。
製薬の現場では、GMP(適正製造基準)のもとで、品質と供給を成立させる責任がある。

主な仕事内容

  • 製造プロセスのスケールアップ(研究→工場への橋渡し)
  • 技術移管(研究条件を工場条件へ落とし込む)
  • 製造トラブル対応、原因調査、再発防止
  • GMP文書(手順書、製造記録)の整備
  • 設備導入・改善、生産性向上、コスト低減
  • バリデーション(プロセスの妥当性確認)

求められるスキル

  • 化学工学・製剤工学・装置理解(深さより“使えるレベル”)
  • 現場の安全・品質意識(ここが最重要)
  • 部署横断の調整力(製造、QC、QA、設備、研究など)
  • データを扱う力(Excel、統計、場合によってはPython)

やりがい

  • 自分の関わった薬が、実際に患者に届く
  • 問題を解決して、工場が回るようになった瞬間が分かりやすい
  • 結果が形になりやすい(工程短縮、歩留まり改善、逸脱削減など)

製造技術は「社会実装に近い」仕事だ。
そのぶん、結果が見えやすく、達成感が得やすい。


「製造技術」と「生産技術」は違うのか?(一般論で整理)

結論から言うと、被る部分は多いが、言葉の“重心”が違う
さらに言えば、会社によって呼び方が揺れるので、名前だけで判断するとミスる。

製造技術(特に製薬でよく使われるニュアンス)

医薬品をGMPの枠組みで「安全・品質・安定供給」を成立させる技術。

求人でよく出る単語:

  • GMP、逸脱、変更、CAPA
  • バリデーション(PV)
  • 技術移管、スケールアップ
  • 手順書、製造記録、査察対応

つまり「製造を成立させる技術+規制文脈」が強い。

生産技術(一般製造業でよく使われるニュアンス)

工場の生産を効率よく回す仕組み(設備・ライン・自動化)に重心がある。

求人でよく出る単語:

  • 工程設計、ライン設計、設備導入
  • FA、自動化、PLC
  • OEE改善、工数削減、歩留まり改善
  • コストダウン、量産立上げ

つまり「生産性・設備・ライン最適化」の色が濃い。

製薬求人での“見分け方”

名称ではなく、求人票の単語で判断するのが確実だ。

  • GMP/逸脱/変更/CAPA/PV が多い → 製造技術寄り
  • 設備導入/FA/PLC/ライン設計 が多い → 生産技術寄り(または設備技術寄り)

同じ部署で両方やっている会社も普通にある。
だから「名称」より「中身」を見るのが正しい。ことが多いが、実務的には近い役割を担っている。


研究職と製造技術職の比較表(就活・転職で使える版)

項目研究職製造技術職(生産技術職)
目的新薬を創り出す(0→1)薬を安定供給する(1→10)
主なフィールド研究所工場・製造本部
成果の出方数年〜十数年単位数ヶ月〜数年単位
成果指標論文・特許・新規性安定供給・逸脱削減・生産性
必要スキル専門性・仮説思考・英語現場理解・調整力・品質意識
働き方の特徴長期テーマ中心緊急対応が入りやすい
転職市場専門性の深掘りが武器スキル横展開が強い

キャリアパスと転職市場(就活生・転職者が一番気になる話)

研究職のキャリア

  • 専門性が評価される(領域特化で強い)
  • 他社研究所、アカデミア寄り、研究開発内での昇進が王道
  • ただし分野依存が強く、異業種に横展開しにくいケースもある

製造技術職のキャリア

  • 工場・品質・設備・データ活用など、横展開が効く
  • 製薬内でのキャリア(工場長・製造管理・技術統括など)もある
  • 生産技術、品質、設備、DXなど、周辺領域に転職しやすい

近年は特に、データ解析や自動化(Excel改善、Python、MES/EBRなど)を理解している人材は評価されやすい。
「現場が分かる+改善できる」は強い。


向いている人はどっち?(就活生が迷う分岐点)

ここが本質だ。

研究職に向いている人

  • 未知に耐えられる
  • 失敗が続いても前進できる
  • 仮説を立てて検証するのが好き
  • 成果が出るまで時間がかかっても折れない

製造技術職に向いている人

  • 再現性・確実性に価値を感じる
  • 現場で起きている問題を解決したい
  • 仕組み化・標準化が好き
  • 部署間調整や人との連携が苦じゃない

重要なのは、どちらが上か下かではない。
「研究のほうがかっこいい」「自信がないから製造技術」みたいな決め方は危険だ。

適性がないと、つらいのは自分だ。
冷静に自分の性質で選ぶべきだ。


FAQ(就活・転職で検索されやすい疑問を回収する)

Q1. 製造技術でも実験はできる?

できる。
ただし目的が違う。探索ではなく、スケールアップや再現性確認、トラブル再現が中心になる。

Q2. 研究職は狭き門?

一般に狭い。特に創薬の中核研究は枠が限られる。
一方で製剤、分析、CMC寄りなどは企業によって入り口が広いこともある。

Q3. 製造技術は夜勤がある?

会社・工場・役割による。
製造オペレーターは交代勤務が多いが、製造技術は日勤中心のことが多い。ただしトラブル対応や立会いで時間がずれることはある。

Q4. 研究→製造技術、製造技術→研究は可能?

可能。ただし簡単ではない。
研究→製造技術は比較的移りやすい。
逆(製造技術→研究)は、研究テーマに直結する専門性や実績が必要になりやすい。

Q5. 転職で評価されやすい実績は?

製造技術なら「数字とセット」が強い。

  • 逸脱原因究明→CAPAまで完了
  • 工程短縮で◯%短縮、◯時間/月削減
  • 歩留まり改善で◯%向上
  • バリデーションを主担当で回した
  • 文書体系の整備で査察リスクを下げた

まとめ:研究職と製造技術職は「創る」と「届ける」の違い

研究職と製造技術職は、どちらも製薬会社に欠かせない存在だ。
役割は明確に違う。

  • 新しい薬を生み出したいなら研究職
  • 薬を安定して社会に届けたいなら製造技術職

そして「製造技術」と「生産技術」は、名称が似ていても重心が違う。
判断するときは、求人票の単語(GMP・逸脱・設備・自動化など)を見て、中身で判断するのが正解だ。

最終的に大事なのは、自分がどちらの価値観にやりがいを感じるか
向いている道を選んだ人が、一番強い。と。製薬会社を志望するなら「製造技術」という言葉で理解しておくとよいだろう。

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この記事を書いた人
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SATOSU

こんにちは、SATOSUです。
35歳です。

元 製薬・化学系メーカーにて、
研究・生産技術・DX推進を横断的に経験してきました。

VBAやPythonを用いた業務自動化ツールを多数開発し、
工数削減や属人化解消など、
現場起点の生産性向上に継続的に取り組んできました。

化学とITの両方を理解できる
「ハイブリッド人材」として、
現場とデジタルをつなぐ役割を担ってきました。

・日米特許 登録(発明者)
・DX推進として業務自動化ツールを多数開発
・IT × 化学 × 現場理解の三位一体スキル
・ブログで Google AdSense 合格

ブログでは、理系キャリア・資格勉強法・仕事の効率化に加え、
現場で使えるイラストや図解も交えながら、
「忙しい30代でも再現できる形」で発信しています。

プライベートでは筋トレやゴルフ、サウナなどを楽しみつつ、
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