バイブコーディングは本当に悪なのか?|ノリで書くコードと、AI時代の“責任”について考える

DX IT プログラミング

はじめに|“vibe coding”が刺さるのは、時代の空気が変わったからだ

DJなどバイブスのイメージ

最近「バイブコーディング(vibe coding)」という言葉がやたら流れてくる。
響きは軽い。ふざけているようにも見える。だが、この軽さの奥にあるのは、開発の主役が「手」から「判断」に移りつつある現実だ。

AIがコードを吐く。人間がそれを試し、直し、方向を決める。
この流れはもはや一過性のブームではない。

だからこそ、議論は二極化する。

  • 「バイブで書くとか終わってる。技術負債の量産だ」
  • 「いや、スピードこそ正義。試して当てる時代だ」

結論を先に言う。
バイブコーディング自体は悪ではない。悪になるのは“責任の置き場”が消える瞬間だ。

この記事では、vibe codingの定義・背景を整理した上で、AI時代に「ノリ」を武器に変える条件を言語化する。

vibe codingとは何か|「コードを読まない」という一点が本質

vibe codingは雑に言うと「ノリで書く」だが、もう少し正確に言うとこうだ。

  • 仕様や設計を厳密に固めない
  • まず動くものをAIと一気に作る
  • そして場合によっては、コードを深く読まずに前に進む

この言葉はAndrej Karpathyが「vibe coding」と呼んで広がったとされる。彼の表現は象徴的で、“コードが存在することすら忘れて、雰囲気に身を委ねる”というニュアンスがある。

重要なのは、ここで言うvibe codingが「AI活用全般」ではない点だ。
LLMを使っても、レビューして理解してテストしているなら、それは単なるAI支援開発であって、狭義のvibe codingとは違う、という整理もある。

つまり、**“ノリで書く”というより、“理解を後回しにする”**ことが核心だ。


なぜ増えたのか|「速度」と「心理的ハードル」が一気に崩れた

vibe codingが増えた理由は単純だ。
速いから、そして始めるのが楽だから

  • 0→1のプロトタイプが爆速になる
  • 「何が正解か分からない」段階で、動くものを先に出せる
  • ChatGPT / Cursor / Claude Code などの普及で、実装の初速が上がった

昔は「手を動かす前に、頭で整理する」が必要だった。
今は違う。「動かしながら整理する」が成立してしまう。

この変化を“堕落”と呼ぶ人もいるが、実態は堕落ではない。
開発の勝ち筋が、設計力だけで決まらなくなっただけだ。学者や趣味で開発する人にとって、vibe codingは一種の入り口になっている。


vibe codingが強い場面/死ぬ場面|最初に線を引け

ここを曖昧にすると議論が荒れる。
vibe codingは万能ではない。向き不向きが極端だ。

vibe codingが強い場面(やっていい)

  • 使い捨て前提の検証(週末プロジェクト、社内の小ツール、PoC)
  • 要件が未確定で、とにかく形が必要なとき
  • 「見せたら前に進む」状況(上司・顧客の合意形成のための試作品)

vibe codingが死ぬ場面(やると爆発する)

  • 本番運用(売上・顧客・データが絡む)
  • 長期保守が前提(引き継ぎが発生する/人が増える)
  • セキュリティ・法務・品質の制約が強い領域

要するに、vibe codingは“速度で不確実性を殴る技”だ。
不確実性が減ってきたら、殴り方を変えないといけない。錯覚。何となくコピペで動かせてしまうが、エラーが出たときに原因が分からず手が止まる。結果、学習機会を失ってしまう。AIが“補助輪”になるどころか、むしろ“思考停止の誘導装置”になる可能性もある。


メリットとデメリット|問題は「コードが汚い」だけじゃない

メリット

  • 思考が止まらず、試行回数を増やせる
  • 初学者でも「作る体験」に到達できる
  • プロトタイプで意思決定が早くなる

ここは事実として強い。
「作れない」を「作れた」に変える力がある。

デメリット(本質は3つ)

① メンテ不能性(未来の自分を殺す)
ノリで積んだコードは、3か月後の自分が読めない。
そして未来の自分はだいたい忙しい。

② セキュリティ事故(取り返しがつかない)
AIが吐いたコードはそれっぽく動くが、秘密情報の扱いが雑なことがある。
「APIキーがログに出る」「権限がガバい」「入力が無防備」みたいな事故は、バグではなく事件になる。
この点をWillisonが強く警告している。

③ 学習停止(“動く”が麻薬になる)
一番危ないのはこれだ。
「動いたからOK」で終わると、エラーが出た瞬間に詰む。
そして詰む経験が増えるほど、AI依存が強まって、さらに理解が遠のく。

「vibe codingは悪だ」と言う声の正体|品質への怒りは、責任への恐怖でもある

経験者がvibe codingを嫌うのは当然だ。
彼らは過去に何度も見ている。

  • 動いていたはずの謎コードが、仕様変更で崩壊する
  • 誰も触れず、結局作り直しになる
  • 「スピードで得した分」を、後で10倍払う

だから、反射的に「悪」と言いたくなる。
ただし、それだけではない。

AIによって「それっぽい実装」が誰でも出せるようになった瞬間、
エンジニアの価値は「書ける」から「判断できる」に移る。

  • 何を作るべきか
  • どこが危険か
  • どこから先は責任が重いか

この移動に追いつけない不安が、強い否定として出る。
つまり、vibe coding論争は、品質論であり、同時に職能の再定義でもある。

AI時代の“責任”とは何か|「書く」ではなく「背負う」能力

AIは考えてくれない。
もっと正確に言うと、考えたように見える文章を出すだけだ。

だからAI時代に一番重要になるのは、コード力そのものより、

  • 「これは本番に入れていいか?」
  • 「この設計は拡張できるか?」
  • 「何が起きたら事故になるか?」

を判断できる目だ。

言い換える。
vibe codingの責任とは、“動かした本人が後始末できる状態を残すこと”だ。


“ノリ”を武器に変える5つのルール|ここだけ守れば事故は減る

vibe codingを肯定するなら、最低限これだけは持て。

1)「捨てる前提」を明文化する

PoCなのか、本番候補なのか。
最初に宣言しないと、PoCがそのまま本番に吸い込まれる。

2)境界線を作る(データと権限)

  • 本番データを触らせない
  • 権限は最小
  • 秘密情報はコードに埋めない
    ここを雑にすると、vibe codingは“遊び”から“事故”に変わる。

3)仕様を“短く”書く(長い設計書はいらない)

要件を1ページに落とせ。
「何を満たせば勝ちか」だけ書けばいい。

4)テストは“薄くてもいいから”必ず入れる

網羅は無理でもいい。
致命傷だけ守るテストを先に作る。これで未来が変わる。

5)最後に必ずリファクタ時間を取る

vibeで作った初版は汚くて当然だ。
問題は「汚いまま固定される」ことだ。

実務で使うならこうする|vibe coding運用テンプレ

現実的な落としどころはこれだ。

  • Phase1:vibeで作る(速度を取りにいく)
  • Phase2:責任を持てる形に整える(判断を取りにいく)

この二段階を分けるだけで、vibe codingは“悪”から“武器”に変わる。

そしてPhase2でやることはシンプルだ。

  • 仕様を短く書く
  • 依存関係を整理する
  • ログとエラーハンドリングを付ける
  • テストを最低限入れる
  • 他人が読める形にする(命名、分割、コメント)

ここまでやって初めて、AI時代の「責任」を果たしたと言える。


まとめ|vibe codingは自由だ。だからこそ責任が要る

vibe codingは、クリエイティブな爆発だ。
考えすぎて止まるより、まず動かす。これは強い。

ただし、自由はタダではない。
AIがコードを書いたとしても、責任の署名欄に名前を書くのは人間だ。

  • ノリで作るのはいい
  • だが、ノリで放置するな
  • 置き土産を“読める形”に変えろ

これができるなら、vibe codingは悪ではない。
むしろ、AI時代の開発スピードを取りにいく最短ルートになる。

この記事を書いた人
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SATOSU

こんにちは、SATOSUです。
35歳です。

元 製薬・化学系メーカーにて、
研究・生産技術・DX推進を横断的に経験してきました。

VBAやPythonを用いた業務自動化ツールを多数開発し、
工数削減や属人化解消など、
現場起点の生産性向上に継続的に取り組んできました。

化学とITの両方を理解できる
「ハイブリッド人材」として、
現場とデジタルをつなぐ役割を担ってきました。

・日米特許 登録(発明者)
・DX推進として業務自動化ツールを多数開発
・IT × 化学 × 現場理解の三位一体スキル
・ブログで Google AdSense 合格

ブログでは、理系キャリア・資格勉強法・仕事の効率化に加え、
現場で使えるイラストや図解も交えながら、
「忙しい30代でも再現できる形」で発信しています。

プライベートでは筋トレやゴルフ、サウナなどを楽しみつつ、
仕事と個人活動の両立に挑戦しています。

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