1. 野良ITとは何か|それは「勝手に作った」ではなく「必要に迫られた」だ
「野良IT」と呼ばれるものは、情シスや正式なIT部門の管理外で、現場の人間が自分で作ったツールや自動化の仕組みを指すことが多い。
ExcelのVBA、Access、Power Automateの個人フロー、Pythonのスクリプト、個人で契約したSaaS――形は何でもいい。共通点はひとつだ。
「待てないから作った」。
似た言葉に「シャドーIT」がある。こちらは一般に、IT部門が把握・承認していないIT資産やクラウド利用を指し、セキュリティや統制の観点から“リスク”として語られやすい。
一方で「野良IT」は、現場の悲鳴と工夫が混ざった、もっと生活感のある言葉だと思う。
野良ITは遊びではない。
「このままだと仕事が回らない」から生まれた、現場の最終手段だ。
野良ITが「迷惑」「危険」と言われる理由|批判されるポイントはだいたい正しい
野良ITが叩かれる理由は、正直わかる。だいたいこの4つだ。
- 属人化:作った本人しか触れない
- 保守不能:壊れたら誰も直せない
- ブラックボックス化:仕様も目的も不明になる
- セキュリティ不明:データの扱い・権限・ログが曖昧
特にVBAは、ファイルにロジックが埋まって見えにくく、作り手の癖がそのまま残りやすい。「ブラックボックス化」「属人化」が起きやすい、という指摘はよくある。
だから、管理側が嫌がるのは自然だ。
ここまではいい。
3. でも現場は言いたい|「ふざけるな。誰も助けてくれなかった」

3. でも現場は言いたい|「ふざけるな。誰も助けてくれなかった」
問題はここからだ。
現場は最初から“好きで”野良ITをやっていない。
頼れる仕組みがない。改善の予算もない。情シスに頼んでも順番待ち。仕様書を書けと言われても、そもそも書く時間がない。
それでも納期は来る。ミスは許されない。残業は増える。
だから自分で作る。自分だけじゃなく、周りの負担も減らすために。
それなのに、成果が出た途端に言われる。
- 「危ないからやめろ」
- 「勝手に作るな」
- 「管理できない」
……冗談じゃない。
外注すれば数十万〜百万円が飛ぶような改善を、現場がゼロ円でやっていることもある。
“迷惑”で切り捨てるなら、じゃあ代わりに仕組みを用意してくれ。最初から。。
4. 評価されず、責任だけが増えていく|野良ITの一番イヤなところ
野良ITを作る人間が壊れていくのは、ここだ。
- 作っても評価されない
- むしろ「勝手にやるな」と怒られる
- それでも現場は便利になる
- すると次は「保守も頼む」と言われる
報酬ゼロ、評価ゼロ、責任だけ増える。
これ、冷静に考えて狂っている。
善意で作った改善が、いつのまにか“無償の保守契約”に変わる。
そして一番やばいのは、こういう扱いが組織に根付くと、改善する人が消えることだ。
残るのは「言われたことだけやる人」と「黙って退職する人」だけになる。
5.「属人化が問題だ」と言うなら、先に文化を作れ|教えても誰も学ばない現実

属人化が問題だと言われる。わかる。だから教える。引き継ぐ。ドキュメントも書く。
それでも継承されないことが多い。
原因はシンプルで、学ぶ文化がないからだ。
- 「プログラミングは無理」
- 「壊しそうで怖い」
- 「それ、あなたがやった方が早い」
この空気があると、誰も触らない。
触らないから、永遠に属人化する。
属人化した結果だけを見て、「ほら危険だ」と言われる。
それは違う。
危険なのは野良ITそのものではなく、改善を“個人の趣味”として放置する組織だ。
6. 潰すな。拾い上げて「資産」にしろ|野良ITは“症状”で、原因は別にある
野良ITにはリスクがある。これは事実だ。
ただ、野良ITは原因じゃない。症状だ。
症状が出る理由はだいたいこうだ。
- 公式ITが遅い/遠い
- 現場の課題が細かすぎて拾われない
- 改善の予算がない
- 申請フローが重い
- “作れる人”だけが勝手に背負わされる
だから本当にやるべきは「禁止」ではない。
入口を作って、仕組みに取り込むことだ。
たとえば、最低限これだけで世界は変わる。
- **野良ITの“持ち込み窓口”**を作る(現場→情シスへ)
- 棚卸し台帳を作り、存在を可視化する(まず把握)
- 最低限の基準を決める(権限/ログ/データ持ち出し/バックアップ)
- レビュー支援を情シスがやる(全部作れとは言わない)
- “サンクションドIT化”=承認済みとして昇格させる
シャドーITの文脈でも「把握できない利用はリスクになる」という点は繰り返し言われている。
だからこそ、潰すより先に「見える化」と「受け皿」だ。
7. おまけ|報酬と称賛がない組織に、改善文化は根づかない

仕組みだけでは足りない。
改善を“得”にしないと、文化は死ぬ。
- 優れた改善には報奨金(数万円〜数十万円でも効く)
- 評価項目に「業務改善・自動化」を入れる
- 改善発表の場をつくり、横展開する
これだけで「改善は報われる」という土壌ができる。
その土壌ができたとき、野良ITという言葉はたぶん消える。
なぜなら、野良である必要がなくなるからだ。
そうしなければ、DXも働き方改革も、いつまでも絵に描いた餅のままだ。



