はじめに|業務改善しても、給料は上がらない
VBAで業務を自動化した。
手作業を減らした。
残業も減らした。
現場の負担も軽くした。
それでも、給料は上がらなかった。
評価がゼロだったわけではない。
「すごいね」とは言われた。
改善提案賞のような形で、わずかな報酬をもらったこともある。
だが、生活が変わるほどの評価ではない。
昇給に直結するわけでもない。
昇進が近づくわけでもない。
この現実に、モヤモヤしたことがある人は多いと思う。
頑張って業務を楽にしたのに、自分の待遇は変わらない。
むしろ、できる人ほど便利屋のように使われることさえある。
私もまさにそうだった。
化学物質の安全性データを集計する作業を、1件あたり1時間から5分に短縮した。
作業フローチャートを自動作成する仕組みも作り、6時間かかっていた作業を30分まで縮めた。
現場目線で、本当に使えるものを作ってきたつもりだ。
それでも会社から返ってきたのは、大きな昇給ではなく、改善提案賞の5千円だった。
一方で、同じ会社は外部コンサルに300万円を払って業務マクロを発注していた。
けれど、納品された仕組みは現場の実情とズレていて、結局ほとんど使われなかった。
私は無料で、しかも現場の人間として、実際に使われるものを作っていた。
それでも給料は変わらない。
この記事では、なぜ業務改善が社内で評価されにくいのか、そしてそれでも改善をやる意味はどこにあるのかを、VBAで改善を続けてきた立場から書く。
私がやってきた業務改善の実例]

業務改善と言っても、きれいな資料を作っただけではない。
現場で本当に時間を食っていた作業に対して、実際に効く仕組みを作ってきた。
たとえば、化学物質の安全性データを集計する作業だ。
1件ずつ手で情報を拾い、整理し、まとめる。
地味だが、かなり時間がかかる。
しかも集中力を使う。
この作業をVBAで仕組み化し、1件1時間かかっていたものを5分まで短縮した。
別の場面では、作業フローチャートを自動作成する仕組みも作った。
以前は人が考えながら整えていたため、6時間近くかかることもあった。
だが、入力の流れを整理し、ある程度自動で形になるようにしたことで、30分程度まで短縮できた。
こういう改善は、派手ではない。
社内報に載るような華やかさもない。
だが、使う人にとっては確実に意味がある。
毎日やる作業が短くなる。
残業が減る。
ミスも減る。
人のストレスも減る。
本来、こうした改善はかなり価値があるはずだ。
だが現実には、その価値が給料に反映されることは少ない。
なぜ業務改善は評価されないのか

では、なぜ業務改善は評価されにくいのか。
理由は一つではないが、現場で感じるのは大きく三つある。
1. 業務改善は「本来業務」と見なされにくいから
多くの会社では、評価の中心にあるのは「与えられた役割で何を出したか」だ。
営業なら売上、研究なら成果、製造なら安定稼働や品質。
つまり、もともと期待されていた仕事で結果を出したかが重視される。
一方で、業務改善はその枠の外に置かれやすい。
便利にはなる。
助かる人もいる。
だが、評価制度の中心ではない。
その結果、どれだけ改善しても「よくやったね」で終わる。
仕事としては役に立っているのに、人事制度の上ではおまけの扱いになる。
これが一番大きい。
2. 改善の価値は見えにくいから
売上は数字で見える。
受注件数も見える。
論文や特許も、分かる人には分かりやすい。
だが、業務改善は価値が伝わりにくい。
たとえば、1人あたり30分短縮できる仕組みを作っても、そのすごさをピンと来ない人は多い。
しかも改善の効果は、日常に溶け込むほど目立たなくなる。
便利になった状態が当たり前になるからだ。
最初は感謝されても、数か月後にはその仕組みがあること自体が当然になる。
そうなると、誰が作ったのかも忘れられる。
改善をした人だけが、静かに報われない。
3. 改善できる人ほど便利屋になりやすいから
VBAが書ける。
Excelを自動化できる。
現場の流れも分かっている。
こういう人材は、組織の中ではかなり貴重だ。
だが、貴重だからこそ、評価されるとは限らない。
むしろ「あの人に頼めば何とかしてくれる」と思われて、仕事が集まりやすい。
感謝はされる。
頼りにもされる。
でも、待遇はそのまま。
これがかなり厄介だ。
改善が得意な人ほど、自分の力で周囲を助けてしまう。
だから組織は回る。
だが、回ってしまうからこそ、根本的な処遇改善が後回しになる。
皮肉だが、できる人ほど損をしやすい構造がある。
それでも私が業務改善をやる理由
ここまで書くと、「じゃあ業務改善なんてやるだけ損ではないか」と思うかもしれない。
実際、その気持ちはよく分かる。
頑張っても給料が上がらない。
評価もたいして変わらない。
だったら最低限だけやって、余計なことはしない方が得に見える。
それでも私は改善を続けてきた。
理由はシンプルだ。
人の時間を救えるからだ。
無駄な手作業が減る。
確認作業が楽になる。
残業が減る。
余計なストレスが減る。
その結果、少し早く家に帰れる人が出る。
気持ちに余裕ができる人が出る。
この価値は、給料の数字にはそのまま表れない。
だが、確実に存在している。
私は、仕事の本質の一つはここにあると思っている。
目の前の不便を見つけて、仕組みで解決すること。
誰かの時間を奪っている無駄を減らすこと。
それは十分に価値のある仕事だ。
しかも、改善は周囲のためだけではない。
自分のためにもなる。
自動化できる作業が増えれば、自分の残業も減る。
浮いた時間で勉強できる。
副業もできる。
転職の準備もできる。
家族との時間も増やせる。
業務改善は、社内で評価されなくても、自分の人生を確実に楽にしてくれる。
だから私はやる。
VBAや業務改善の経験は、社外では強い武器になる

社内では軽く扱われることがあっても、社外では話が変わる。
なぜなら、業務改善の経験は単なるVBAスキルではないからだ。
本当に評価されるのは、「問題を見つけて、仕組みで解決した経験」の方だ。
たとえば面接で、
「化学物質の安全性データ集計を1件1時間から5分に短縮した」
「フローチャート作成を6時間から30分に短縮した」
と話せば、それだけでかなり強い。
なぜならそこには、単なるプログラミング能力以上のものがあるからだ。
現場を理解している。
課題を言語化できる。
改善前と改善後を比較できる。
使う人の目線で仕組みを作れる。
実際に運用まで落とし込める。
これらは、どの会社でも欲しい力だ。
特に、研究、製造、品質、事務、社内SE、DX推進のような領域では刺さりやすい。
VBAそのものは古いと言われることもある。
だが、重要なのは言語の新しさではない。
現場の課題を解き、実務に落とした経験があるかどうかだ。
そこに再現性があれば、転職市場では十分武器になる。
業務改善が報われない会社で消耗しないために考えるべきこと
ここはかなり大事だと思う。
業務改善が好きな人ほど、理想を持ちやすい。
仕組みを作れば現場は楽になる。
無駄をなくせば会社は良くなる。
それ自体は正しい。
だが、会社によっては、その価値を正しく受け取る構造がない。
改善しても評価されない。
頼られるだけで終わる。
便利屋化して疲弊する。
そういう環境では、社内評価だけを基準にしない方がいい。
改善した内容は、必ず記録しておいた方がいい。
どの業務を対象にしたのか。
どれくらい時間が減ったのか。
何人が使っているのか。
どんな工夫をしたのか。
どの技術を使ったのか。
これを残しておくと、あとで大きな財産になる。
転職の職務経歴書にも使えるし、自分の強みを言語化する材料にもなる。
社内で報われないからといって、その経験の価値まで消えるわけではない。
評価される場所が、今の会社の外にあるだけかもしれない。
まとめ|評価されなくても、価値は消えない
業務改善をしても、給料や昇進に直結しないことは多い。
VBAで残業を減らしても、現場を楽にしても、返ってくるのは「すごいね」とわずかな賞金だけ。
そんな現実は、たしかにある。
だが、それで改善の価値がなくなるわけではない。
業務改善は、人の時間を救う。
無駄を減らす。
ストレスを減らす。
自分の時間も取り戻せる。
そして何より、社外では確実に評価される武器になる。
問題を発見し、仕組みで解決し、実際に使われる形まで持っていった経験。
これは立派な実績だ。
だからこそ、社内評価だけを基準にしない方がいい。
報われない会社の中だけで、自分の価値を決めなくていい。
誰にも大きく褒められなくてもいい。
昇給にすぐつながらなくてもいい。
自分で「これは意味のある仕事だった」と言えるなら、それは十分価値がある。
あなたの改善は、確実に誰かを楽にしている。
そして、その積み重ねはいつか、会社の外で自分を助ける武器になる。


